表面欠陥の大規模データセットが登場 機械の自動検査に期待あり【AI×製造】(論文)

   

非効率な工作機械の欠陥検出

産業界の物体分類問題は、深層学習の登場以降注目を集めています。しかし、多くの分野では深層学習を適用させるためのデータセットがまだまだ不足しています。

産業界における分類タスクの1つに、工作機械の部品の表面検査があります。予期しない機械の故障を防ぐことができるため、この検査を高精度・低コストで行うことは非常に関心が高まっています。

工作機械の部品の欠陥検出における課題に対して、どのような研究が行われているのでしょうか。
ドイツにあるカールスルーエ工科大学のTobias Schlagenhaufらの研究を紹介します。

研究者らは、表面の異常検出を行うシステムの開発のための有効なデータセットを作成しました。

▼論文情報

タイトル:Industrial Machine Tool Component Surface Defect Dataset
著者:Tobias Schlagenhauf, Magnus Landwehr, Juergen Fleischer
所属機関:Karlsruhe Institute of Technology(KIT、ドイツ)
発表日:2021/3/24
URL:DOI
データセット:kit.edu

金属部品の欠陥検出のためのデータセット作成

まずはTobias Schlagenhaufらの研究におけるミッション・手法・結果をまとめます。

✔️ミッション
工作機械の欠陥検出を高精度・低コストで行いたい。

✔️解決手法
金属部品の表面欠陥状況の画像データセットを作成した。

✔️結果
分類、セグメンテーション、故障予知に役立てられるデータセットが完成した。

ミッションから説明していきます。

金属部品の欠陥検出の効率化

これまで、工作機械の金属部品の欠陥検出は、手作業で行われることがしばしばありました。しかし手作業による検査は時間も費用もかかるため、非効率的です。
種々の欠陥をコストを抑えて見極められるような深層学習モデルを構築するためには、訓練データセットを作成する必要があります。

センサーシステムを用いた撮影

Tobias Schlagenhaufらは、専用の装置を構築し、データセットの作成に取り組みました。

  • データセットの部品(ボールねじ)
    ボールねじは、工作機械の軸などを動かすために、回転運動を直線運動に変換する工作機械の主要部品の一つです。
    ボールねじは最も摩耗しやすい工作機械の一つであり、工作機械の予想外の故障の原因となることが多い部品です。
    データセットは、このボールねじの摩耗画像から構成されています。
  • センサーシステム
    画像データセットの作成に使用したセンサーシステムを図1に示します。
    このシステムは、③のマウントアダプタを使って、ボールねじのナットに取り付けられています。カメラ(①)は、いわゆるディフューザー(④)の穴から、スピンドルを覗きます。スピンドルを回転させるとナットが直線的に動き、その下でスピンドルが回転しているので、カメラはスピンドルのすべての軌道を見ることができます。このようにして、スピンドル全体を撮影することができます。②は、スピンドルを囲むように取り付けられ、実験中の照明条件を均一にするために使用されています。
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図1 センサーシステム
  • セットアップ
    データセットは、カールスルーエ工科大学の生産科学研究所に設置されたテストベンチで作成されています。
    テストベンチは、搭載されたカメラシステムとともに図2に示されています。テストベンチは、最大5つのスピンドルを並行して装着できるように構成されています。
図2 テストベンチ
  • 欠陥分類のためのデータセット
    孔のある部分と孔のない部分を示す150×150ピクセルのRGB画像21853枚の.pngフォーマットで構成されています。このデータセットは、約50%の画像にピッティングが見られるように分割されています。具体的には、孔のない画像が11075枚、孔のある画像が10778枚となります。各画像にはラベル∈{𝑃, 𝑁}が付与されており、𝑃は孔あり、𝑁は孔なしを表しています。
    図3、4に孔あり、孔なしそれぞれの画像を示します。
図3 孔ありの画像データ例
図4 孔なしの画像データ例

多くのタスクに利用できるデータセットの開発に成功

結果、分類・セグメンテーション・故障予知を行うことができる初めての単一データセットの構築に成功しました。

これにより、現実の条件下でシンプルな分類モデルを開発することができるようになります。さらに、このデータセットは、汚れた金属表面の小さな欠陥を検出することができます。これは、欠陥をできるだけ早期に検出する必要がある産業用欠陥検出アプリケーションにとって重要な要素です。
著者らは、表面欠陥を検出するための、すぐに使えるベースラインモデルを発表しました。これは、より強力なモデルアーキテクチャを開発するための基盤としてとして役立つと考えられます。

研究紹介は以上です。

産業の様々な領域に深層学習技術が応用されています。
より産業が効率的に行われるようになっていくことが期待されます。

※今回紹介したデータセットは、kit.eduに公開されています。

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