AIは病気の未来が分かる!? 「メディカルAI」今週の5本(2020年5月第4週版)

   

最新研究をサクっとキャッチアップできる「今週の5本」シリーズ。今週のメディカルAI編では、以下の5つの最新AI研究に注目していきます!

今週のラインナップ
1. COVID-19罹患を予測する新たなAIモデル
2. AIが心電図から異常を発見
3. 手術するべき?しないべき?AIが術後を予測
4. 緑内障の進行を予測して失明を防ぐ
5. 肺気腫の重症度をAIが予測

今回も手術支援AIベンチャーCEOの河野健一医師にコメントをいただきました!

手術支援AI事業を展開している河野先生のiMed TechnologiesはAIエンジニアを募集しています!関心のある方はこの記事の下部をチェック!

COVID-19罹患を予測する新たなAIモデル

AIで新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の診断を補佐する研究は世界中で精力的に行われています。先週もまた、新たな研究が発表されました。

イギリスのキングスカレッジロンドンの研究者らのチームは、英国と米国の約250万人分がスマートフォンを通じて報告したデータを用いて、年齢、性別、4つの主要な症状に基づいてその人がCOVID-19であるかどうかを予測できるAIモデルを開発しました。また、発熱よりも嗅覚障害がCOVID-19を予測する上で重要な因子であることも分かりました。日本では感染者数が徐々に減少傾向にあるものの、長期的にCOVID-19と付き合っていく上で、日本でもこうしたモデルの実用化が求められているでしょう。

ソース: Real-time tracking of self-reported symptoms to predict potential COVID-19

河野先生のコメント

COVID-19では多くの研究が行われています。本研究の注目すべき点は、スマホで250万人という多くのデータを集めたことです。結果の信頼性はデータ量に大きく依存します。このような多くのデータを集めることができる施設・企業は限られており、日本であれば実際にアンケートが行われていましたが、LINEなどのプラットフォーマーが行うことになると思います。

一方で、データの精度に気をつける必要があります。おそらく自己申告ですので、電子カルテなどで取れるデータに比べると信頼性が落ちる可能性があります。このあたりのトレードオフをうまく考慮して、実社会に導入できるシステムができるといいですね。

関連記事: 今知るべき「新型コロナ×AI」最新事例(2020年4月第4週版)#今週の5本

AIが心電図から異常を発見

心疾患は世界中で主要な死因となっており、心疾患の診断における心電図解析はかなり重要です。心電図は医療現場で日常的に使用されていますが、心電図の異常な波形の解析は、専門医が手動で行うため手間がかかります。

そこで、ブラジルのミナス・ジェライス連邦大学の研究者らのチームは、心房細動をはじめとする一般的な心電図波形異常を自動的に診断できるAIを開発しました。すでに心臓医が異常を分類した200万以上の心電図波形のデータを機械学習させたところ、一部の異常においては特異度が99パーセントと、専門医と同等あるいはそれ以上の精度で診断することができました。このAIにより、心臓専門医がいない医療機関や中所得国における治療状況を改善できるようになることが期待できます。

ソース:AI – a New Tool for Cardiac Diagnostics

河野先生のコメント

みなさんも年1回の検診で心電図を行われていると思います。実は現状でも、心電図結果に自動で診断支援のコメントがついていて、個人的にはそれを見ています。あくまで参考とするだけですが、本研究ではその診断精度を上げています。

エンジニア的視点で言えば、心電図の診断に対する機械学習は大きく2つに分類されます。1つはLong short-term memory(LSTM)などの時系列モデルを利用することです。もう1つは心電図を画像として捉えることです。

医療現場で医師が心電図をみてどのように判断しているかというと、推測ですが、初心者は時系列モデルに近く前後関係を細かく見て、熟練者はパッと全体を見て画像パターンとして診断を行っている気がします。このように、医師が行っている判断プロセスと診断アルゴリズムの対比も興味深いところですね。

関連記事:精度は医師レベル!?AIが血液検査から病気を予測

手術するべき?しないべき?AIが術後を予測

病気や事故によって肩関節の変形や破壊が進行した場合は、損傷した肩関節を人工の肩関節に置き換える「人工肩関節置換手術(aTSA)」や「リバース型人工肩関節置換手術(rTSA)」が行われます。インパクトある名前の通り、負担が大きい手術であるため、本当に手術が有効であるかを正しく見極める必要があります。

そこでアメリカの医療系企業の研究者らは、aTSAやrTSAの術後の結果を予測するAIを開発しました。7811人の実際の患者のデータをもとに、疼痛スコアや外転、前屈、外旋などの肩の動きを、術前、術中、術後の状態それぞれについて機械学習させ分析させました。結果、高い精度で予測でき、手術によって臨床的な改善が見込めるかどうかも識別できるようになりました。こうした予測は、患者に適切な処置を施す意思決定をサポートするでしょう。

ソース:What Is the Accuracy of Three Different Machine Learning Techniques to Predict Clinical Outcomes After Shoulder Arthroplasty?

河野先生のコメント

手術の中には、行うべきかどうか迷うものがあります。機能を改善するための手術はそのひとつです。

例えば痛みを軽減したり、動かしにくくなった手足の動きを良くしたりする手術などがそれに相当します。それらの手術の適応は明確なものもありますが、グレーで迷うものもあります。症状が良くなるかもしれないけど、良くならないかもしれない、そのような場合に判断に迷います。最終的にはやってみないと分からない、ということもあります。

そのように迷う場合に、本研究は方針決定や患者さんへの説明の補助として役立つことが期待されます。

関連記事: 外科医の手術の上手さをVRシミュレーションでランク付け

緑内障の進行を予測して失明を防ぐ

緑内障は、視神経に異常が起こり、見える範囲が狭くなったり一部が見えなくなったりする病気です。最悪の場合、失明することもあり、急速な進行による失明リスクを抱えている人を早期に特定することが急務となっています。

そこでイギリスのインペリアルカレッジロンドンの研究者らは、損傷した細胞を検出できるDARCと呼ばれる手法で得られた網膜スキャンデータから、病気の進行を予測できるAIアルゴリズムを開発しました。このAIで評価された20人の緑内障患者を含む60人の参加者を追跡したところ、18か月後の進行性緑内障を正しく予測することができました。これまで専門家によってまちまちだった解釈の統一や、臨床試験や診断への応用も期待できます。

ソース:A CNN-aided method to predict glaucoma progression using DARC (Detection of Apoptosing Retinal Cells)

河野先生のコメント

ここではビジネス的視点で本研究をみてみましょう。その場合、「損傷した細胞を検出できるDARCと呼ばれる手法」がビジネスの鍵になりそうです。

私は眼科医ではないので知りませんが、この手法が一般的に広まっているのであれば、導入はしやすいというメリットがある反面、競合他社に模倣されやすいというデメリットがあります。逆に、この手法が広まっていないのであれば、その手法(医療機器)を組み合わせることにより、模倣困難生が増す反面、導入に時間がかかり広まりにくいというデメリットがあります。

このようなトレードオフを考慮した上で、ハード(手法、医療機器)とソフト(解析)を上手く組み合わせられると、ビジネス的によい戦略になると思います。

関連記事: 高齢者の転倒を防げ!AIで突発的な転倒を予測

肺気腫の重症度をAIが予測

喫煙による肺の炎症により引き起こされる肺気腫や慢性気管支炎は、世界的に患者数の多い病気であり、肺活量検査およびCT撮影によって診断・評価されます。しかし、既存の検査は時間と手間がかかるため、より簡易な方法が求められています。

アメリカ・サウスカロライナ医科大学の研究者らのチームは、すでに肺活量測定とCTスキャンが行われた患者141人のデータを用いて、肺気腫の重症度を予測できるAIを開発しました。このAIによる重症度の定量化は、人間の医師が重症度を測定するときに使用する指標と強い相関を示しました。こうしたAIは、診断のスピードアップや診断の客観性の向上につながるでしょう。

ソース:Artificial intelligence could serve as backup to radiologists’ eyes

河野先生のコメント

医療には専門的な知識が必要であり、更に各分野に細分化しているため、研究の概要を把握することが困難なことが多いと思います。今回の内容は肺(呼吸器)であり、私の専門は脳ですので、私にとってもイメージを掴むことは簡単ではありません。

そのような状況で、エンジニアや一般の方を含めて、研究のイメージを掴むには、研究の図を見るのがいいと思います。リンク先の図を見ると、肺のCTに対して、青い色がついていることが分かると思います(機械学習の分野ではセグメンテーションといいます)。これを手作業で行うのは大変そうであることが分かると思います。また、色がついている部分が、肺気腫のところですので、定量化できることが推測されます。

慣れない分野もこのように見ていくと、イメージを掴むことができるようになると思います。

関連記事: 「死を予測するAI」は、がん患者の終末期を幸せにするか(AI×医療)【論文】

研究紹介は以上です。また次回をお楽しみに!

一緒に働きたいエンジニア募集中!

メディカルAIシリーズでおなじみの河野先生より、AIエンジニアに関する募集文が寄せられています。

「私の会社、iMed Technologiesでは、世界の手術をより良くしていきたいというビジョンに共感し、一緒に医療現場を変えていきたい、新しい未来を作りたいエンジニアを募集しています! 医療データは豊富にあります。お気軽にご連絡下さい。」

連絡先: vyr01450☆gmail.com(☆を@に変えてください)
Twitter:@CeoImed

河野 健一(こうの・けんいち)さんプロフィール

手術支援AIを開発している株式会社iMed Technologiesの代表取締役CEO。

東京大学理学部数学科卒。京都大学医学部卒。グロービスMBA修了。医師(脳血管内治療指導医、脳神経外科専門医、脳卒中専門医)。

脳神経外科医師として医療現場で16年間勤務。現場で脳血管内手術の課題を感じ、「世界に安全な手術を届ける」という理念を掲げ、2019年4月にiMed Technologiesを設立。現在、くも膜下出血や脳梗塞に対する脳血管内治療のリアルタイム手術支援AIを開発中。

HP: https://imed-tech.co.jp/

【今週の5本】「メディカルAI」最新研究紹介バックナンバー

バックナンバーはこちら

業界から探す

さらに学ぼう!

PAGE TOP