インフルエンザの流行を左右する要因
インフルエンザウイルスにより、年間で最大65万人程度が命を落としている。明らかなのは、インフルエンザの拡大は季節的な気象条件の影響を受けるということである。例えば、高緯度地域かつ低気温・低湿度の環境下では、インフルエンザウイルスの感染力は格段に上昇することが明らかになっている。また、中緯度地域における年二回の感染の発生原因としては、寒さと雨の多い気象条件とが交互に入れ替わるためである。

ノルウェーにあるNorwegian University of Science and TechnologyのAleksandrら研究者は、この気象学的条件とインフルエンザの感染力の関係性をより明確にするために、ランダムフォレストアルゴリズムを用いた機械学習モデリングによる解明を試みた。結果、北欧のインフルエンザ感染要因において、低温とUV指数が最も予測能力の高い指標であるということが分かった。
ウイルス感染拡大と気象学的要因の関連性を機械学習で特定
Aleksandrらの研究のポイントは以下の通りだ。
✔️ミッション ✔️解決手法 ✔️結果 |
研究の詳細を以下で述べる。
気象学的要因とインフルエンザ感染の関係性の特定
近年、地球温暖化のペースが速まっており、気候の変動が著しい。そんな中、気候変動の大きな影響を受けるインフルエンザの感染発生を予測するために、気象学的要因とインフルエンザ感染の関係を解明する必要性が高まっている。
機械学習を用いた感染原因の特定
Aleksandrら研究者は、2010年~2018年において以下に記載する国々のデータを機械学習(ランダムフォレスト)を用いて解析し、その要因の解明に取り組んだ。
<調査対象国>
- ノルウェイ
- スウェーデン
- フィンランド
- エストニア
- ラトビア
- リトアニア
<気象学上感染要因>
- 気温
- UV指数
- 湿度
- 風速
- 気圧
- 降水量
気温と紫外線量がウイルス感染予測に有用
相関と機械学習分析で明らかになったのは、北欧のインフルエンザ感染要因において、気温の低さとUV指数が最も予測能力の高い要因であるということだった。試験官内の実験の結果、低温および紫外線が強い環境では、インフルエンザウイルスの感染力が高い状態に保たれ続けた。これら気象学的要因とインフルエンザウイルスの活動の関連性を発見することで、インフルエンザ感染拡大のより正確な予測モデルなどの開発・調査が可能になるはずである。

研究紹介は以上だ。
感染予測が可能になることにより、私たちは多くの病気を事前に防ぐことができるだろう。
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この記事で取り扱った論文:Aleksandr Ianevski,Eva Zusinaite,Nastassia Shtaida,Hannimari Kallio-Kokko,Miia Valkonen,Anu Kantele,Kaidi Telling,Irja Lutsar,Pille Letjuka,Natalja Metelitsa,Valentyn Oksenych,Uga Dumpis,Astra Vitkauskiene,Kestutis Stašaitis,Christina Öhrmalm,Kåre Bondeson,Anders Bergqvist,Rebecca J. Cox,Tanel Tenson,Andres Merits and Denis E. Kainov,”Low Temperature and Low UV Indexes Correlated with Peaks of Influenza Virus Activity in Northern Europe during 2010–2018″,Viruses 2019, 11(3), 207- DOI
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