人の音声からAIが「性格」を予測

   
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テキサス大学の研究者らによる報告です。 機械学習モデルに音声を分析させることで、性格特性ビッグ5(外向性・協調性・誠実性・開放性・神経症的傾向)を予測できることが示唆されました。

※この記事では、Twitterで反響があった話題に対して詳細や補足をまとめています。

なお、上記ツイートでは「20秒の音声から」と記載しましたが、機械学習用に選択された音声データは平均50秒、その前段階で収集された音声データは平均20秒でした。お詫びして訂正いたします。

性格特性ビッグ5とは

ビッグ5(ビッグファイブ)とは、以下5つの因子によって人の性格が構成されるという学説です。

  • 外向性
  • 協調性
  • 開放性
  • 誠実性
  • 神経症的傾向

「外向性」は社交性、「協調性」は優しさ、「開放性」は創造性や計画性、「誠実性」は思慮深さ、「神経症的傾向」は悲しみや情緒不安定性を伴います。

ビッグ5理論の背景には歴史があります。「人の性格にはいくつの形質が存在するか」を突き止めようとする試みは長い間行われ、例えばゴードン・オールポートによって4,000の性格特性、レイモンド・キャッテルによって16の性格要素、ハンス・アイゼンクによって3 要素理論が提唱されてきました。その後「ビッグ5」が登場し、複雑過ぎず、簡易過ぎることもない点などから支持されていきました。

5つの性格特性それぞれが、両極端の間を表していることに注意しましょう。たとえば「外向性」は極端な外向性と極端な内向性の間のどこにいるのかを表しており、現実の世界ではほとんどの人が中間のどこかにいるのです。

音声データに含まれる特徴を分析

性格特性を分析する上で、人々はある壁にあたっています。それは、自己報告に頼っているという状況です。自己報告には本人のバイアスがかかっており、その点を克服する方法が模索されています。

テキサス大学のMarrero, Zachariah N.K.ら研究グループは、人の音声には心理に関連する特徴が多く含まれていることに注目し、音声を機械学習で分析することで性格を予測する取り組みを行いました。

研究グループはまず、テキサス大学の学生992人から「最近の活動」「思考」「感情」「行動」に関する回答を音声ベースで集めました。
集まった音声サンプル数は合計25,163件で平均21.32秒でした。

参加者の学生は、60項目からなるビッグ5調査に協力しました。さらに(表題には挙げていませんが)、参加者の学生はうつ病のスクリーニングテストも受けました。

分析に必要な最低限の単語数を含む音声データ(平均50.74秒)のみが選ばれ、機械学習用に前処理されました。言語の側面での前処理にはLIWC2015、音の側面での前処理にはpyAudioAnalysisというアプリケーションが使用されました。

研究者らは上記の前処理済み音声データから、性格特性5つに加えて、うつ病の有無、年齢、性別を予測しようとしました。予測に使用したのはXGBoostという機械学習アルゴリズムです。

性格特性をAI予測 実験で有意な結果

音声データから言語的および音的特徴を抽出した情報を機械学習アルゴリズムによって分析したところ、性格特性を有意に予測できることがわかりました。

中でも外向性、誠実性、神経症傾向は予測しやすく、反対に開放性と協調性は比較的予測しづらいという結果が得られました。

基本的には、音声データにおける言語的特徴、音的特徴の両方を組み合わせた分析の方が精度が高いようです。しかし詳しく見ていくと、神経症的傾向に関しては言語的特徴との相関が高いのに対し、他の4特性に関しては音的特徴との相関が高いとのことです。

なお、予測性能の評価には(よく使われている)AUCではなく、out of sample R squaredが採用されました。著者は、今回は結果の解釈においてAUCが誤解を招くリスクがあるとコメントしています。

また、うつ病の有無に関しては性格特性よりも高い精度(性別に関しては、より高い精度)で予測できることが示唆されました。

まとめ

現在では、性格を分析するときの最も一般的なやり方は自己報告によるデータを分析することです。しかし、自己報告にはバイアスがつきものです。

音声データを機械的に分析することによって客観的な結果が得られれば、「自己申告に頼らない」評価方法として心理学的にブレークスルーとなります。

今回の研究結果は、AIによって音声から性格特性を予測できる可能性を示唆しています。しかし、単純なタスクではなく、推測的な部分も含まれているため、著者は控えめな態度で報告を行なっています。
また、教師データにおいて、やはり自己報告が採用されているため、その点を改善する方法が追究されていくことが期待されます。

今はまだ手放しで「AIが声から性格を理解する」とは結論づけられません。ただし、少なくとも今回の実験計画と結果は一定の注目に値すると言えます。

今回のツイートでSNSでは不安の声も上がっていましたが、考えられるアプリケーションにはポジティブなものが多く含まれます。例えば、自らの声から他人に与えられるパーソナリティの印象を客観的に捉え、目標とする印象を形成するための訓練をスマートフォン一つで行うことができるようになるかもしれません。
また、性格特性以外にも音声データの情報分析にはまだまだ可能性があります。
今後の展開に注目していきましょう。

参照論文情報

  • タイトル:Evaluating voice samples as a potential source of information about personality
  • 著者:Zachariah N.K. Marrero, Samuel D. Gosling, James W. Pennebaker, Gabriella M. Harari
  • URL:10.1016/j.actpsy.2022.103740

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