AIがAmong Us!でインポスターを当てるのは不可能ではない

   
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人狼アクションゲームを知っているか

Among Us!というゲームをご存知でしょうか。Among Us!は2020年におけるSteamベストセラーゲームの一つであり、その後も人気を博し続けています。アクションゲームと人狼(テーブルゲーム)の要素を合わせた作りになっているのが特徴です。クルーメイト(多数派の人間)とインポスター(少数派の人狼)が生き残りをかけた戦いを行います。
最近では人気YouTuberがAmong Us!のゲーム実況を行うなどの影響で、Among Us!はゲーム愛好家だけでなく一般に親しまれるようになってきました。TwitterやDiscordなどでは、日々情報交換や対戦募集が行われています。

コミュニケーションが勝敗の鍵を握っているため、(いまのところ)NPCは存在せず、プレイヤーは人間だけです。
今回はそんなAmong Us!をテーマにしたAIの研究をご紹介します。

ちなみに、Among Us!の前身とも言えるテーブルゲーム「人狼」は1986年にロシアで初めて考案されました。人狼とは、複数人のプレイヤー(人間)に潜む少数派の悪者(人狼)を推測するゲームです。

人狼は複雑で奥深いため、ゲームの勝ち方などを研究した論文なども幾つか発表されています。
「コミュニケーションが主体のゲームなので話術の優れた者が勝つ」かと思いきや、それだけではありません。少ないヒントから答えに辿り着く論理力も試されるゲームです。

論理的に戦うゲームでもあるなら、人間同士の戦いにAIが混ざっても良い勝負をするのでしょうか?というか、そもそもAIは人狼を学ぶことはできるのでしょうか?
そんな問いに取り組んだ研究者がいます。

▼論文情報

著者:Harro Tuin, Martin Rooijackers
タイトル:”Automatically detecting player roles in Among Us”
ジャーナル:2021 IEEE
URL:ieee-cog.org/2021/assets/papers/paper_249.pdf

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Among Us! vs. 機械学習

まずはHarro Tuinらの研究におけるミッション・手法・結果をまとめました。

✔️ミッション
Among Us!におけるプレイヤーの役職(クルーメイトかインポスターか)を機械学習で当てるための基礎を作る。

✔️解決手法
ゲーム内容を抽出するフレームワークの用意と推論する機械学習モデルの開発を行なった。

✔️結果
フレームワークの作成に成功し、またゲーム内の役職を推論することが「学習可能な課題」であることを示した。

ミッションから説明していきます。

オンラインゲームだからこそ貯まっていく「人狼」の学習データ

過去10年、人狼ゲームで「プレイヤーの役職を当てること」が機械的に可能なのかどうかは注目されてきました。
チェスやリバーシ、将棋、囲碁のように「計算量は膨大だがシンプルな理論に則ったゲーム」はAIの得意とするところですが、コミュニケーションによって勝敗が決まるものに関してはAIが活躍した例はありません。

そもそも人狼のようなソーシャルゲームはデータが貯まりにくいので、AIが学習するための準備すら簡単ではありませんでした。
そんな中、Among Us! というゲームが流行りました。このゲームは、テキストチャットによってプレイヤー同士の話し合いが進んでいきます。
そのため「どんな話し合いが行われたか」と「どのプレイヤーがどの役職だったのか」がセットになったデータテーブルが膨大に蓄積されることになります。

オランダのEindhoven University of Technologyに属するHarro Tuinら研究者は、AIに学習させるためのデータを抽出するフレームワークを作成する、そしてAIがプレイヤーの役職を当てる試みを行うことにしました。

データ抽出フレームワークを完成

Among Us!は、テキストチャットだけでなく音声チャットによるゲーム進行も人気です。しかし今回は学習データをより簡単に取得するために、テキストチャットのみを対象としたデータ抽出が取り組まれました。

研究者らは、OpenCVライブラリー(インテルが開発したオープンソースのライブラリー)を利用して、フレームごとにビデオを処理する仕組みを開発することにしました。

OpenCVライブラリーを利用してビデオフレーム内から情報が取り出される様子

人狼ゲームに馴染みがある方は分かると思いますが、「会議」と呼ばれる話し合いのあとに、人狼だと疑わしきプレイヤーに投票が集まり、ゲームから除外される流れがあります。
Harro Tuinらの開発したシステムはこの「会議」および「ゲームの終了画面」から、下記のデータを抽出して記録するようなフレームワークを開発しました。

  • 誰が誰に投票したのか
  • 誰が人狼(インポスター)だったのか
  • 会議中にチャットで交わされた会話内容

会話はコンピュータビジョンの中でもOCR(光学式文字認識)と呼ばれる技術によって抽出されました。

抽出されたデータは前処理を行ったあと、自然言語処理によってAIが学習可能な情報へと変換される必要がありました。以下のような手順がとられました。

  1. トークン化
  2. テキストの正規化
  3. ストップワード
  4. 単語のベクトル化

可能性の兆し、そして確かな手応え

データを抽出できるようになったので、いよいよAIにAmong Us!の推理を学習させました。

SVM(サポートベクターマシン)という機械学習モデルにデータを入力し、ハイパーパラメータの調整が行われました。

モデルの性能をテストしたところ、以下のような結果が出ました。

RBFカーネルを備えたSVMモデルが最高のAUCスコア0.62を示しました。

このスコアは決して高いものではありませんが、人狼ゲームにおいて会話内容をAIが分析することでプレイヤーの役職を当てることは不可能ではない(=機械学習可能な課題である)ことは確かに示されました。

この研究では59回のゲームを学習しましたが、もっと多くのゲームから学習データを大量に取り出せば、Among Us!におけるインポスター推理に長けたクルーAIが誕生するかもしれません。

研究紹介は以上です。

この研究はAI愛好家にとってだけではなく、ゲーム愛好家にとっても興味深いものでしょう。なぜなら、人数が揃わないとゲームを開始できないことが、しばしばプレイヤーを悩ませることがあるからです。

今回紹介した研究で開発されたコードはGitHubにアップロードされています。エンジニアは見てみると面白いでしょう。

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