薬が脳を通過できるか予測!ほか 創薬AIの最新研究5選【週刊】

   

薬づくりが変わる、業界が変わる。

このシリーズでは「製薬業界を変えるAI技術」と題して、創薬AIに関連する研究を毎週ご紹介します。以下のような用途でご活用ください。

  • 業界の将来予測
  • AI技術調査
  • 各病における治療法の展望

担当するのは薬学部出身ライター、Masashiです。

今回は以下の5つの研究に注目していきます!

今週のラインナップ
1. 血液脳関門の透過性を予測
2. 標的タンパク質ごとにDTIを予測
3. 口腔がんの標的遺伝子を予測
4. 抗マラリア薬候補を予測
5. 希少疾患(ファンコニ貧血)の標的を予測

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血液脳関門の透過性を予測

中国・マカオ科学技術大学(2019年6月19日発表)

血液脳関門(BBB)は、中枢神経系(CNS)機能の維持に関わり、血液から脳組織への物質の移行を制限する役割を担っています。BBB透過性の有無がCNS薬の条件を満たす項目の一つであるため、BBB透過性の正確な予測が期待されています。

中国にあるマカオ科学技術大学の研究者らは、ディープラーニング手法を用いて、薬物の副作用や適応症例などの臨床データに基づいた血液脳関門の透過性予測モデルの開発を行いました。

結果、ディープラーニングが他の既存の機械学習モデルよりも優れたパフォーマンスを示し、平均精度は0.97に達しました。今後は、薬物がBBBにどのように透過するのかを予測するため、薬物の化学構造特性を組み合わせた予測モデルの構築が実施されるでしょう。

ソース:Improved Classification of Blood-Brain-Barrier Drugs Using Deep Learning.

関連記事: 古典的な画像処理はMRIから脳腫瘍を発見できるか?

標的タンパク質ごとにDTIを予測

中国・安徽大学(2019年12月24日発表)

薬物と標的の相互作用(DTI)の特定は、新薬開発に必要不可欠でありますが、医薬品開発プロセスにおいて非常に困難で費用のかかる作業です。そこで、従来より、DTIを予測するために、計算科学手法を用いて、薬物の構造類似性や標的タンパク質との結合親和性を考慮したDTI予測手法の開発が活発に行われてきました。

中国にある安徽大学の研究者らは、ディープラーニングを用いて、AAindex1データベースから抽出されたアミノ酸の物理化学的特徴や、薬物の化学情報を記載したPaDEL-Descriptorによって計算される薬物記述子から、DTIを予測するモデルの構築を行いました。

結果、酵素、イオンチャネル、GPCR、および核内受容体といった各標的タンパク質データセットに対してそれぞれ最大92.0%、90.0%、92.0%、90.7%の精度で予測できることを示しました。今後、本モデルにより標的ごとのDTIの正確な予測が可能になり、標的を絞った効率的な新薬開発へと繋がっていくでしょう。

ソース:Predicting drug-target interactions from drug structure and protein sequence using novel convolutional neural networks.

関連記事: 薬と標的の相互作用、「表現学習」でより正確に予測

口腔がんの標的遺伝子を予測

アメリカ・カリフォルニア大学(2019年11月28日発表)

口腔がんは、乳がんや肺がんに比べて比較的まれながんですが、他の疾患の治療法が、口腔がんに対して効果的である可能性が示唆されています。既存薬を適用できる口腔がんの標的遺伝子を明らかにできれば、口腔がんに対する新規治療法の確立へと繋がる可能性があります。

アメリカのカリフォルニア大学の研究者は、機械学習を使用して、化学療法で影響を与える重要な標的遺伝子を決定し、その遺伝子により発現するタンパク質に結合するリガンド(特定のタンパク質に特異的に結合する物質)のスクリーニングを行いました。

結果、これまでに口腔がん治療の標的として承認されていない複数の標的遺伝子を発見しました(セリチニブやボルテゾミブの標的となるINSR、BRAFPSMB7など)。今後、口腔がんに対するより詳細な標的の特定が進められることで、効果の高い既存薬の転用が実現されるでしょう。

ソース:Identification of Targetable Pathways in Oral Cancer Patients via Random Forest and Chemical Informatics.

関連記事:既存薬の新しい可能性をAIで探る

抗マラリア薬候補を予測

ブラジル・ゴイアス連邦大学(20年2月18日発表)

マラリアは世界中で2億1,600万人以上が感染し、年間445,000人以上の患者が亡くなっている感染症です。現在の抗マラリア薬に対する耐性の絶え間ない出現により、新薬開発は急務の課題となっています。そこで、創薬プロセスを格段に速くできる機械学習を用いた手法が注目されています。

ブラジルのゴイアス連邦大学の研究者らは、ディープラーニングを用いて、化合物の抗マラリア原虫活性および細胞毒性を予測するモデルの構築を行い、抗マラリア薬候補のスクリーニングを行いました。

結果、モデルの精度はCCR値が0.82〜0.87となり、486,115種類の化合物の中から2種類の有効な化合物の絞り込みに成功しました。今後、薬物耐性を獲得しやすい疾患に対して、機械学習を用いた創薬手法が、より有用な手段として多く取り入れられるようになるでしょう。

ソース:Deep Learning-driven research for drug discovery: Tackling Malaria.

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希少疾患(ファンコニ貧血)の標的を予測

スペイン・ ビルヘン・デル・ロシオ大学病院 (2019年7月2日発表)

ファンコニ貧血(FA)は、遺伝子の異常を修復する機構に不具合が生じることで発症する難病で、感染症やがんにかかりやすいなどの症状があります。こうした希少疾患に対する創薬は、創薬コストを抑えるため、既存薬の転用や機械学習を用いた手法の確立が求められています。

スペインにあるビルヘン・デル・ロシオ大学病院の研究者らは、機械学習を用いて、FAの発症に関連するシグナル伝達経路を予測し、それらの活性に関連するタンパク質の推定を行いました。

結果、合計17種類の遺伝子が、0.006のしきい値を超える関連性を持つことが確認され、それらと作用するNEK2やTOP2Aなどの8種類のタンパク質が薬物標的として有効であると示唆されました。今後、機械学習を利用した既存薬の転用により、データ量の少ない希少疾患に対する創薬の進展が期待されるでしょう。

ソース:Exploring the druggable space around the Fanconi anemia pathway using machine learning and mechanistic models.

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研究紹介は以上です。また次回をお楽しみに!

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