AIで肺炎治療に革命をもたらす(AI×医療)【論文】#AI時代の疾病対策 Vol.1

   

肺炎治療におけるAI利用

2020年初頭から世間を騒がせているコロナウイルスは、人体の免疫系の働きを狂わせ重症肺炎を引き起こす。その強い感染力で人々を苦しめている。

肺炎と言えば、いまなお死因で上位を占める病気である。特に、5歳未満の子供や70歳以上の高齢者に多い。2007年から2017年にの間で36%程度肺炎による5歳未満の子供の死者数は減少したが、逆に70歳以上の高齢者に絞って見てみると、34%その数が上昇している。

そんな中、人工知能を医療判断補助に使おうという試みがなされており、かつその研究結果はとても魅力的である。しかし、医療従事者で、どのAIが現行の医学治療において有効性を発揮するのかについて、理解がある人は多くない。

 スペインにあるUniversity of BarcelonaのMarianaら研究者は、こうした医学領域の素早い変化の中で、既存の文献を整理することにより、医療従事者の知識のアップデートを試みた。この取り組みにより、医学領域の意思決定プロセスでの適切なAI使用と、そのさらなる発展が期待される。
この記事では、彼らがピックアップしたAI技術例を紹介する。

AI×医療、相性の良さを示すいくつかの研究報告例

Marianaらの調査報告のポイントは以下の通りだ。

AIを医療判断補助ツールとして使用

AIを医療判断補助ツールとして使用することは、かなり有効な概念である。この進展を推し進めるには、次の2つを満たせば良い。すなわち、健康医療電子記録(EHR)データの入手のしやすさと、コンピュータ計算能力の向上である。これら2つのコンセプトは、マシンラーニング(ML)やニューラルネット(NN)のような複雑な数学の関数という観点から、相互に関連している。

Jcm 09 00248 g001 550
AIの歴史的発展のタイムライン

AI×肺炎、研究例

近年報告された、いくつかの研究では、こうした医療におけるAI利用の潜在的な可能性が示唆されている。例えば、肺炎の診断と治療において、AIと胸部X線(CXR)画像を使用することは、初期の診断に高い有効性を持ち、抗菌剤投与やより良い予後につなげることができる。

ひとつひとつ見ていこう。

Case1- 肺炎の検出、および肺炎がウイルス由来かバクテリア由来かの識別を行う

2018年に中国の医科大学の研究者らの発表によると、肺炎の検出精度は93%、ウイルス由来かバクテリア由来かは91%の精度で区別可能だということがわかった。

手法:
ニューラルネットワークにより、5,232枚の胸部のX線画像をモデルのトレーニングに用いた。完成したモデルは624枚の画像を使ってテストされた。
このデータセットは配布されている。

Kermany, D.S.; Goldbaum, M.; Cai, W.; Valentim, C.C.S.; Liang, H.; Baxter, S.L.; McKeown, A.; Yang, G.; Wu, X.; Yan, F.; et al. Identifying Medical Diagnoses and Treatable Diseases by Image-Based Deep Learning. Cell2018172, 1122–1131.

Case2- 肺炎の種別を分類する

2019年に韓国の研究者らの発表によると、90%以上の正確性を持つ肺炎種別の分類器が誕生した。

手法:
ニューラルネットワークと、データセットの質・量の向上ツールを用いて、5856枚のX線画像からトレーニングしたモデルを検証した。

提案されたアーキテクチャ

Stephen, O.; Sain, M.; Maduh, U.J.; Jeong, D.U. An Efficient Deep Learning Approach to Pneumonia Classification in Healthcare. J. Healthc. Eng.20192019.

Case3- 肺炎ほか様々な疾病の区別を行うー人間の医師との比較

こちらも韓国の研究者による報告だ。画像の分類では98%、病変ごとの位置特定では97%の精度を示し、人間の医師よりも高いパフォーマンスを発揮した。

手法:ディープラーニングを用いて、54,221の「異常なし」X線画像、41,140の「異常あり」X線画像によりトレーニングを行った。

Hwang, E.J.; Park, S.; Jin, K.N.; Kim, J.I.; Choi, S.Y.; Lee, J.H.; Goo, J.M.; Aum, J.; Yim, J.J.; Cohen, J.G.; et al. Development and Validation of a Deep Learning-Based Automated Detection Algorithm for Major Thoracic Diseases on Chest Radiographs. JAMA Netw. Open20192, e191095.

AIと医療の相性の良さ

このように、AIが医療分野で徐々に広く研究されるようになってきており、ニューラルネットアルゴリズムを最大限に活かしながら、多くの研究で高い予測率が報告され、当分野におけるAI使用の潜在的可能性を示唆している。

研究紹介は以上だ。

AI進展により、これまで検知が難しかった病気も、専門知識なしに診断できるようになっていくだろう。

AI×医療」のほかの記事もどうぞ

▶ 人とネコの心をつなぐAI?ネコの痛みが分かる指標を開発
▶ アルツハイマー病患者との「会話をサポート」自動対話システムを開発
▶ 外科医の手術の上手さをVRシミュレーションでランク付け


この記事で取り扱った論文:Mariana Chumbita,Catia Cillóniz,Pedro Puerta-Alcalde,Estela Moreno-García,Gemma Sanjuan,Nicole Garcia-Pouton,Alex Soriano,Antoni Torres and Carolina Garcia-Vidal,”Can Artificial Intelligence Improve the Management of Pneumonia”,[ジャJ. Clin. Med.20209(1), 248- DOI


業界ごとに記事を読む

さらに学ぼう!

PAGE TOP