プロ釣り人の経験をAIで再現!?「海水温」のパターン認識から釣りポイントを予測【AI論文】

こんにちは。釣りを趣味としながらAI開発を本業としています、つりくず(@kuzu_tsuri)です。今回も、釣りとAI開発の知見を活かして、釣りに役立ちそうなAI技術についてご紹介いたします。

前回の記事
▶ 魚の声から魚種を予測!「AI搭載型ルアー」で爆釣も夢じゃない?【AI論文】

魚がよく釣れるポイント探しは自動化できる?

釣果を上げるために釣り場所(ポイント)を選ぶのはもっとも重要な活動の1つです。同じ堤防であっても、釣るポイントによって釣果が大きく変わることはよくあります。ポイント選びは、釣果速報の確認やその日の釣り場の状況などを考えながら行うことになりますが、良いポイントを選べるようになるには多くの経験を重ねる必要があります。

さて、わたしのような趣味で釣りをしている人ではなく、本業の漁師さんはどのような方法でポイントを予測しているのでしょうか。

漁師さんのポイント選びも、勘と経験に頼る部分もあるのですが、基本的には海流図や水温図等を確認しながら良いポイントのあたりをつけているそうです。そこから魚群探知機を用いて、ポイントを特定する作業を行なっています。このとき使用する海流図や水温図は、海上保安庁のホームページから簡単に入手することが可能で、なんと毎日更新されています!

※2019年12月1日の衛星水温画像(海洋保安庁ホームページより)

このようなデータが揃っているのであれば、海水温のパターン等をAIに学習させて、良いポイント(魚がたくさんいるポイント)の特定を自動化することで、漁業の効率化ができそうですね。今回紹介する論文は、京都大学のIiyamaらが、釣りポイント探しをAIで自動化する問題に取り組んだ内容となっております!

良いポイントを見つけるAIの開発

Iiyamaらの研究のポイントは以下の通りです。

✔️ミッション
海水温データから魚が多くいるポイントの分類を行う

✔️解決手法
one class SVMを利用し魚がいるポイントの分類モデルを構築

✔️結果
海水温のパターンから魚が多くいる傾向があるポイントの予測に成功

それでは、研究の詳細を説明してきます。

「良いポイント」を定義する

今回の研究に使う海水温データは容易に入手できます。 海水温データを使って、良いポイントと悪いポイントを分類するというアイデア自体は簡単そうに見えます。しかし、良いポイントと悪いポイントをAIにどう教えたら良いでしょうか?そもそも良いポイントとはどうしたら定義できるのでしょうか?

ここには分類問題におけるAI開発の難しさがあります。AI開発においてはデータが全てです。何が正解で何が誤りかを決める基準が曖昧だと、できあがるAIモデルも曖昧になってしまいます。

今回の研究では、アカイカ漁業データを用いて、2つのアプローチで「良いポイント」を定義しました。

1つ目は、どのポイントでどれくらいのアカイカを確保できたかの過去データを、航海日誌から丁寧に集めるアプローチでした。このデータを元に、良いポイントの定義付けを行いました。

2つ目は、衛星写真データや船舶モニタリングデータを用いて、過去にアカイカ漁船が漁を行った位置のデータを集めるアプローチでした。アカイカ漁船が魚群探知機を使ってよく釣れるポイントを特定していると仮定すると、過去に漁船が漁を行った位置は良いポイントだと考えられるためです。

文章で表現すると数行での内容ですが、地道なデータ収集をしっかり行なった上に本研究があるようです。このデータ集めは非常に大変な作業だったと想像でき、研究者には本当に頭が下がる思いです。

海水温パターンと釣果をAIに学習させる

「良いポイント」を定義したら、次はAIに学習させます。

今回の研究では、「one class SVM(Support Vector Machine)」という手法を用いて学習が行われました。この手法は、メールからスパムメールを見抜くような異常検知によく使われるアルゴリズムです。特徴としては、正常なデータのみを学習させ、正常から外れた値は異常とみなす点にあります。

今回正常とみなしたデータは、魚がたくさん捕獲できる良いポイントです。1999年から2009年の間でアカイカがたくさん取れた5058ポイントを学習用データとして利用し、2010年から2012年の1181ポイントを評価用データとして利用しました。

学習の結果、海水温のパターンは5つに分類することができ、それぞれのパターンごとに漁獲量を紐付けることができました。さらに、評価用データでも、海水温から5パターンに分類することで、良いポイント・悪いポイントを分類することができました。

※評価を実施した際の海水温パターン(Iiyama et al, 2009 Fig2. (c))
※漁獲量から5つのグループに分類した結果(黄色が最も良いポイント)(Iiyama et al, 2009 Fig2. (b))

上記の図のように、海水温のパターンから良いポイント・悪いポイントの分類に成功しました。

AIが釣りポイントを教えてくれる時代は来るのか?

今回の研究によって、漁獲量には海水温が関係すると分かったので、趣味で釣りをする場合にもこれまで以上に海水温が気になりますね。実際のクラスタリングの結果を見ると、海水温に変化がある箇所が良いポイントとなっているようにも見えます。

釣りをやっているとよく、「雨が降った後は釣れる?釣れない?」のような議論に出くわしますが、釣果と雨が関係するのは、雨による海水温の変化が理由なのかも知れません。例えば、雨の日は橋の下と外では海水温が変わりますので、もしかすると釣果にも影響があるかも知れません。

※橋の下と外では海水温が変わる可能性もあり(著者撮影)

今回は、アカイカをベースとした研究でしたので、アジやヒラメ等、他の魚でも応用できるか検証が必要そうです。また、評価したデータも10年以上昔のデータなので、AIが予測したポイントで現在どれくらい釣れるのかについても実証実験を行い、より精度を高めていく必要がありそうです。

現時点では、私たちが釣りをするような堤防等で、海水温などのデータを集めることは非常に難しいですが、釣果情報サービス等が充実していき、釣り場のデータがより構造化されれば、趣味で釣りをしている人たちにもAIによるポイント予測サービスが提供可能になる可能性を感じることができました!

この記事で取り扱った論文:Iiyama, Masaaki & Zhao, Kei & Hashimoto, Atsushi & Kasahara, Hidekazu & Minoh, Michihiko. (2018). Fishing Spot Prediction by Sea Temperature Pattern Learning. 1-4. 018 OCEANS – MTS/IEEE Kobe Techno-Ocean (OTO). DOI

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